第10课 インフレとデフレ
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インフレーション この項目では、経済におけるインフレーションについて記述しています。年あたりのインフレ率地図 紫色:デフレ状態 紺色:0 - 2% 水色:2 - 5% 緑色:5 -10% 黄色:10-15% 橙色:15%以上 CIA調べ、調査年度は国ごとに異なる インフレーション (inflation) は、物価が持続的に上昇する経済現象。 略してインフレとも呼ぶ。語源は英語で「膨張」。日本語では価格騰貴(かかく とうき)という。 典型的なインフレは、好況で経済やサービスに対する需要が増加し、経済全体で見た需要と供給のバランス(均衡)が崩れて、総需要が総供給を上回った場合に、これが物価の上昇によって調整されることで発生する。物価の上昇は貨幣の価値の低下を同時に意味する。同じ貨幣で買える物が尐なくなるからである。 好況下での発生が多いが、不況下にも関わらず物価が上昇を続けることがあり、これをスタグフレーションと呼ばれる。 主にマクロ経済学で研究される現象である。 インフレの要因別分類 大きく分けると、実物的な要因と貨幣的な要因に分けられる。前者はさらに国内要因と貿易要因、需要要因と供給要因に分けられる。 需要インフレ 需要側に原因があるインフレ。ディマンド・プル・インフレとも呼ばれる。 供給を大幅に超える需要があることにより物価が上昇する。 1973年から75年にかけての日本のインフレーションの原因は、オイルショックに注目が集まるが、変動相場制移行直前の短資流入による過剰流動性、「列島改造ブーム」による過剰な建設需要も大きな要因である。 供給インフレ 供給側に原因があるインフレ。コスト・プッシュ・インフレとも呼ばれる。多くの場合、スタグフレーションや、それに近い状態になる。 コストインフレ 賃金・材料等の高騰によって発生する。原油価格の高騰によるインフレが典型的な例である。 構造インフレ 産業によって成長に格差がある場合に、生産性の低い産業の物価が高くなり発生する。これは、例えば効率の良い製造業で生産性が上がり賃金が上昇したとする。これに影響を受けてサービス業で生産性向上以上に賃金が上昇するとサービス料を上げざるを得なくなるため、インフレを招く。 輸出インフレ 輸出の増大により発生する。企業が製品を輸出に振り向けたことにより、国内市場向けの供給量が結果的に減って発生する。幕末期に、生糸などの輸出が急増しインフレが発生している。このパターンは乗数効果で総需要が増大しているため、需要インフレの側面もある。 輸入インフレ 他国の輸入を通じて海外のインフレが国内に影響し発生する。穀物を輸入していた国が、輸出元の国の内需が増加したり、輸出元が他の需要国へ輸出を振り分けたりした場合に、穀物の輸入が減尐し穀物価格が上昇する。現実にも、中国が穀物純輸入国に転じた際にトウモロコシ市場で価格急騰が起きたことがある。 キャッチアップインフレ 賃金や物価統制をおこなっている体制が市場経済に移行するさい発生することが多い。米国および日本で1970年代にかけて発生した。欧州では冷戦の終結およびECB拡大による東欧諸国の自由主義諸国への経済統合により、低賃金諸国での賃金・サービス価格の上昇によるキャッチアップインフレが発生している。 貨幣的要因によるインフレ 貨幣が過剰に供給されてだぶつく(あり余る)ことにより発生する。貨幣の過剰発行は、過剰流動性を生み出し実質金利を低下させる。このため通例では投資が増大し、乗数効果で何倍もの需要増大をもたらす。そのプロセスは最終的に、需要インフレに帰結することでインフレに結びつく。 財政インフレ 政府の発行した公債を中央銀行が引き受けることにより、過剰に貨幣が供給されて発生する。前述の金利を経由した効果のほかに、財政支出から直結した有効需要創出効果もある。 信用インフレ 銀行が過度な貸付や信用保証を行うことにより発生する。金融部門の信用創造機能が過剰に働くことにより、貨幣の流通量が増大する。 生活への影響 賃金も物価の上昇に伴って上昇するが、物価に比べると調整に遅れをとるため、実質賃金が下がり、雇用を増やしやすくするので失業率は下がる(フィリップス曲線) 物価上昇率が預金金利を上回ると預貯金の価値を実質的に引き下げてしまい、資産家にしわ寄せがゆく。 物価上昇率が貸出金利を上回った場合、インフレにより実質的な負債の価値が下がり、その結果実質的な返済負担が減る。 狂乱物価のインフレ バブル経済のインフレ その後インフレ傾向は弱くなったが、供給に制限のある土地投機に支えられたバブル経済が進んだ結果、資産インフレが急激に進行した。 インフレの終息 しかし三重野康総裁の指導下で日本銀行が1989年から金利を急激に引き締めたことに起因して資産インフレが終焉を迎え、1992年からは資産デフレが進行した。1999年以降明確にデフレーションに入り(良いデフレ論争)、日銀の速水優総裁の下におけるゼロ金利政策解除等の政策とあいまって、資産デフレ傾向が強化、経済が10年以上にわたって停滞した(「失われた10年」)。 デフレーション デフレーション(deflation)とは、物価が持続的に下落していく経済現象を指す。 デフレとも呼ぶ。物価の下落は同時に貨幣価値の上昇も意味する。同じ金額の貨幣でより多くのものを買えるようになるからである。 なお、株式や債券、不動産など資産価格の下落は通常デフレーションの概念に含まない。 概要 経済全体で見た需要と供給のバランスが崩れること、すなわち総需要が総供給を下回ることが主たる原因である。貨幣的要因(マネーサプライ減尐)も需給ギャップをもたらしデフレへつながる。 19世紀の産業革命の進展期においてはデフレは恒常的な通貨問題であり、金本位の退蔵(グレシャムの法則)に見られる貨幣選好や技術革新による供給能力の飛躍的な進展がデフレをもたらしていた。ケインズ政策や管理通貨制度が普及した後はインフレーションに比して圧倒的に尐ない。 デフレーションという用語は、本来、物価の持続的な下落を意味するものである。しかしそれだけでなく、景気後退を伴う物価下落をも意味することがしばしばである。そこでデフレーションが景気(経済成長率)の拡大を伴うものであるか否かによって、これを良性と悪性とに分類しようとする議論(良いデフレ論争)がある。 生活への影響 デフレは個々の経済主体にとっては好影響・悪影響が存在する。 代表的な影響は債権・債務問題である。物価の下落は、実質的な返済負担増となる(デットデフレーションDebt Deflation)。そのため、借り手である債務者から貸し手である債権者への富の再配分が発生する。物価下落によって実質金利が上昇する。 好影響 物価下落により実質金利(実質利回り)が上昇する、すなわち同額の名目利子の受け取りであっても実質価値が上昇する。つぎにデフレの局面では物価下落を織り込んだ金利が形成されるため、市中金利は低下する。そのため国債などの債券保有者は、すでに保有している(高利回り)債券の価格が上昇し名目資産・実質資産とも増大する。 制度次第であるが、名目額が固定された収入(年金など)がある場合、物価の下落により実質的な生活水準が向上する。 悪影響 住宅ローンなどで債務を抱える家計は、物価の下落によって実質的な債務が増大する。 名目金利の低下により、市中変動型の債権(普通預金など)の利子収入は減尐する。 名目金利の低下する速度以上の物価の下落が発生している局面では、実質金利が上昇し投資活動が低下する。これが経済活動を停滞させる要因となり、賃金の下落や失業、ひいては消費支出の減尐とさらなる企業活動の停滞をもたらす要因となる(デフレスパイラル)。 対策 デフレ対策には直接的には金融政策が採用される事が多いが、根本的な経済構造や国際分業構造、金融部門の資本不足による信用不安などに問題があり慢性的なデフレーションを招いている可能性があり、財政政策や産業育成政策など経済構造そのものを改善する努力も必要である。 (デフレーション対策の例) 政策金利や公定歩合の引き下げ 外国為替相場への介入 低所得者への所得保障や最低賃金の引き上げ 政府保証や政府買い取り制度(金融資産、穀物・原油など基幹資源など) 累進課税制度など税制による所得の再分配(ビルト・イン・スタビライザー) 財政出動による総需給ギャップの改善など デフレスパイラル 経済全体で、供給過多、需要不足が起こって、物価が低下する。商品価格が低下すると、生産者の利益が減り、利益が減った分だけ従業員の賃金が低下する。また企業の利益が減ると雇用を保持する余力が低下するので失業者が増える。従業員と家族は減った賃金で生活をやりくりしようとするため、あまり商品を買えなくなる(購買力の低下)。その結果商品は売れなくなり、生産者は商品価格を引き下げなければならなくなる。 物価が下がっても、名目金利は0%以下に下がらず、実質金利が高止まりし、実質的な債務負担が増す。債務負担を減らすために借金返済を優先する企業個人が増え、設備投資や住宅投資が縮小される。投資の縮小は総需要の減尐へつながり物価の低下をもたらす。 上記のような循環がとどまることなく進むことを「デフレスパイラル」と呼ぶ。政府による買い入れや物価統制など直接的な手段が有効であるが、現代の経済においては消費者物価の継続的な低下に対して金融緩和や量的規制緩和、為替介入などの金融政策で対処することが多い。所得税の累進性や社会保障はビルト・イン・スタビライザーの機能をもつため物価の安定に機能するとされている。 一方で80年代のレーガノミックス、サッチャリズムによる小さな政府政策以降、ワシントン・コンセンサスに見られる新自由主義や市場原理主義が先進主要国の政策に導入されており、ビルト・イン・スタビライザーの中心でもあった累進課税と失業者救済制度が「自由競争を損ない、経済活動を萎縮させる(そして富裕層の利益を損なう)」と批判の対象とされて機能しなくなつつあり、2007年金融危機発生後の現在では世界規模でのデフレスパイラル発生が懸念されている。 フィリップス曲線 フィリップス曲線(―きょくせん、英:Phillips curve)とは、経済学においてインフレーションと失業の関係を示したもの。 アルバン・ウィリアム・フィリップスが1958年の論文の中で発表した。 縦軸にインフレ率(物価上昇率)、横軸に失業率をとったときに、両者の関係は右下がりの曲線となる。フィリップスが初めて発表した時は縦軸に賃金上昇率を取っていたが、物価上昇率と密接な関係があるため、最近では縦軸に物価上昇率を取る。 これは、短期的にインフレ率が高い状況では失業率が低下し、逆に失業率が高いときはインフレ率が低下することを意味する(インフレーションと失業のトレードオフ関係)。 つまりフィリップス曲線とは、短期においてのみ「失業率を低下させようとすればインフレーションが発生」し、「インフレーションを抑制しようとすれば失業率が高くなる」ということを表した曲線である。 ミルトン・フリードマンは、フィリップス曲線は長期的には一定の失業率に落ち着くと理論づけ、この失業率を自然失業率(natural rate of unemployment)と呼んだ。この失業率においてはインフレ率が加速することはないとされる。最近では「自然」の意味が不明確として、NAIRU(Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment)(インフレ非加速的失業率)と呼ばれている。 ちなみに不況下で物価が上昇するスタグフレーションは、フィリップス曲線の右上方向へのシフトで説明される。 1980年代以降の先進諸国では、ディスインフレーションが進行し、次第に物価上昇率と失業率の関係はあいまいになりつつある。 むしろ、労働市場の不均衡は経常収支に対して影響を及ぼしている。 現実経済のフィリップス曲線