ちぐはぐな部品星新一角川文库
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星新一(1926-1997),日本现代科幻小说作家,以微型小说著名,作品最大特点是构思巧妙。
星新一(ほししんいち),1926年9月生于日本东京,父亲是制药公司经理,曾赴美留学,还创办了药科大学,并担任过参议院议员。
星新一的外祖母小金井喜美子是日本著名作家森鸥外的妹妹,有名的“明星派”“歌人” (指“和歌”诗人。
和歌是一种日本诗体。
),外祖父小金井良精博士是日本解剖学和人类学的草创者。
星新一幼年时与外祖父母生活在一起,受他们的影响很深。
星新一曾就读于日本东京女子高等师范学院附属小学,念完中学后又考入东京大学农学部园艺化学系,毕业后进入东京大学研究院继续深造。
在公司濒临破产之际,星新一那种暗淡忧郁的心情是显而易见的。
因此,虽然星新一并非彻底的悲观消极的厌世主义者,但坎坷多艰的经历却使他具备了一种对弱肉强食、尔虞我诈的资本主义社会的敏锐的洞察力,写出了许多异彩纷呈、从各个角度反映社会现实的微型小说。
个人生平1926年9月生于日本东京一个科学世家。
祖父小金井良精是人类学者,祖母是文豪森鸥外的妹妹喜美子,父亲是制药公司经理,曾赴美留学,还创办了药科大学,并担任过参议院议员。
1956年为逃避生意上的失败,加入了飞碟研究会。
1957年,星新一和柴野拓美一起创办了日本最早的科幻小说同人志《宇宙尘》,为日本科幻文学做出了卓越的贡献。
同年,他发表处女作,受到请多文坛前辈的青睐,作品被转载到当时由江户川乱步主编的推理小说杂志《宝石》,很快地跃登文坛。
1960年荣获直木赏的殊荣(曾有四次入围直木赏候补的记录)1974年,日本新潮社出版了《星新一作品全集》,达十八卷之多。
1976年他荣获日本推理小说家协会大奖。
1981年日本讲谈社创办了文学季刊《微型小说园地》,并在该刊设立“星新一微型小说文学奖”,每年举办一次。
至1983年10月止,星新一发表的作品已逾一千篇,堪称世界纪录创造者。
1993年,在他完成第1001则极短篇作品后,宣布停笔。
秋芥川龍之介一信子は女子大学にゐた時から、才媛さいゑんの名声を担になつてゐた。
彼女が早晩作家として文壇に打つて出る事は、殆ほとんど誰も疑はなかつた。
中には彼女が在学中、既に三百何枚かの自叙伝体小説を書き上げたなどと吹聴ふいちやうして歩くものもあつた。
が、学校を卒業して見ると、まだ女学校も出てゐない妹の照子と彼女とを抱へて、後家ごけを立て通して来た母の手前も、さうは我儘わがままを云はれない、複雑な事情もないではなかつた。
そこで彼女は創作を始める前に、まづ世間の習慣通り、縁談からきめてかかるべく余儀なくされた。
彼女には俊吉しゆんきちと云ふ従兄いとこがあつた。
彼は当時まだ大学の文科に籍を置いてゐたが、やはり将来は作家仲間に身を投ずる意志があるらしかつた。
信子はこの従兄の大学生と、昔から親しく往来してゐた。
それが互に文学と云ふ共通の話題が出来てからは、愈いよいよ親しみが増したやうであつた。
唯、彼は信子と違つて、当世流行のトルストズムなどには一向敬意を表さなかつた。
さうして始終フランス仕込みの皮肉や警句ばかり並べてゐた。
かう云ふ俊吉の冷笑的な態度は、時々万事真面目な信子を怒らせてしまふ事があつた。
が、彼女は怒りながらも俊吉の皮肉や警句の中に、何か軽蔑けいべつ出来ないものを感じない訳には行かなかつた。
だから彼女は在学中も、彼と一しよに展覧会や音楽会へ行く事が稀ではなかつた。
尤もつとも大抵そんな時には、妹の照子も同伴いつしよであつた。
彼等三人は行きも返りも、気兼ねなく笑つたり話したりした。
が、妹の照子だけは、時々話の圏外へ置きざりにされる事もあつた。
それでも照子は子供らしく、飾窓の中のパラソルや絹のシヨオルを覗き歩いて、格別閑却された事を不平に思つてもゐないらしかつた。
信子はしかしそれに気がつくと、必かならず話頭を転換して、すぐに又元の通り妹にも口をきかせようとした。
その癖まづ照子を忘れるものは、何時いつも信子自身であつた。
一夜夏目漱石「美くしき多くの人の、美くしき多くの夢を……」と髯ひげある人が二たび三たび微吟びぎんして、あとは思案の体ていである。
灯ひに写る床柱とこばしらにもたれたる直なおき背せの、この時少しく前にかがんで、両手に抱いだく膝頭ひざがしらに険けわしき山が出来る。
佳句かくを得て佳句を続つぎ能あたわざるを恨うらみてか、黒くゆるやかに引ける眉まゆの下より安からぬ眼の色が光る。
「描えがけども成らず、描けども成らず」と椽えんに端居はしいして天下晴れて胡坐あぐらかけるが繰り返す。
兼ねて覚えたる禅語ぜんごにて即興なれば間に合わすつもりか。
剛こわき髪を五分ぶに刈りて髯貯たくわえぬ丸顔を傾けて「描けども、描けども、夢なれば、描けども、成りがたし」と高らかに誦じゅし了おわって、からからと笑いながら、室へやの中なる女を顧かえりみる。
竹籠たけかごに熱き光りを避けて、微かすかにともすランプを隔てて、右手に違い棚、前は緑り深き庭に向えるが女である。
「画家ならば絵にもしましょ。
女ならば絹を枠わくに張って、縫いにとりましょ」と云いながら、白地の浴衣ゆかたに片足をそと崩くずせば、小豆皮あずきがわの座布団ざぶとんを白き甲が滑すべり落ちて、なまめかしからぬほどは艶えんなる居ずまいとなる。
「美しき多くの人の、美しき多くの夢を……」と膝ひざ抱いだく男が再び吟じ出すあとにつけて「縫いにやとらん。
縫いとらば誰に贈らん。
贈らん誰に」と女は態わざとらしからぬ様さまながらちょと笑う。
やがて朱塗の団扇うちわの柄えにて、乱れかかる頬ほおの黒髪をうるさしとばかり払えば、柄えの先につけたる紫のふさが波を打って、緑り濃き香油の薫かおりの中に躍おどり入る。
「我に贈れ」と髯なき人が、すぐ言い添えてまたからからと笑う。
女の頬には乳色の底から捕えがたき笑の渦うずが浮き上って、瞼まぶたにはさっと薄き紅くれないを溶とく。
「縫えばどんな色で」と髯あるは真面目まじめにきく。
「絹買えば白き絹、糸買えば銀の糸、金の糸、消えなんとする虹にじの糸、夜と昼との界さかいなる夕暮の糸、恋の色、恨うらみの色は無論ありましょ」と女は眼をあげて床柱とこばしらの方を見る。
星新一简介篇一:星新一生平介绍文档星新一生平介绍星新一(1926-1997),日本东京人,本名星亲一,日本科幻界奇才,以创作精巧别致、富于哲思的“微型小说”闻名于世。
星新一的作品庞杂,除了科幻小说之外,还写了大量推理小说、幽默小说、散文及随笔。
他的作品曾在八十年代大量翻译引进台湾,带动“极短篇”小说的创作风气。
在科幻方面,代表作品有短篇小说《有撒旦的天国》、《最后的地球人》、《未来伊索寓言》、长篇小说《声之网》、《梦魔的标靶》等。
1926年9月生于日本东京一个科学世家。
祖父小金井良精是人类学者,祖母是文豪森鸥外的妹妹喜美子,父亲是制药公司经理,曾赴美留学,还创办了药科大学,并担任过参议院议员。
1956年为逃避生意上的失败,加入了飞碟研究会。
1957年,星新一和柴野拓美一起创办了日本最早的科幻小说同人志《宇宙尘》,为日本科幻文学做出了卓越的贡献。
同年,他发表处女作,受到请多文坛前辈的青睐,作品被转载到当时由江户川乱步主编的推理小说杂志《宝石》,很快地跃登文坛。
1960年荣获直木赏的殊荣(曾有四次入围直木赏候补的记录)1974年,日本新潮社出版了《星新一作品全集》,达十八卷之多。
1976年他荣获日本推理小说家协会大奖。
1981年日本讲谈社创办了文学季刊《微型小说园地》,并在该刊设立“星新一微型小说文学奖”,每年举办一次。
至1983年10月止,星新一发表的作品已逾一千篇,堪称世界纪录创造者。
1993年,在他完成第1001则极短篇作品后,宣布停笔。
之后他的病情迅速恶化。
1997年以间质性肺炎病逝。
篇二:作者简介八年级作者简介八年级(下)1《藤野先生》选自《朝花夕拾》,作者鲁迅浙江绍兴人原名周树人,字豫才,文学家,思想家,革命家,中国现代文学的开拓者和奠基人,著有小说《呐喊》、《彷徨》、《故事新编》等,其中《狂。
新しき夫の愛――牢獄の夫より妻への愛の手紙――若杉鳥子-------------------------------------------------------【テキスト中に現れる記号について】《》:ルビ(例)時期《とき》に|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号(例)近頃|閑《ひま》になったせいか[#]:入力者注主に外字の説明や、傍点の位置の指定(数字は、底本のページと行数)(例)[#この行は注記、202-10]本文中、伏せ字は「*」であらわした。
-------------------------------------------------------山内ゆう子――私は一人の新しい女性を紹介する。
見た処彼女はまだほんの初々しい、はにかみがちな少女に過ぎない。
だが少し相対して話していると、聡明な実にしっかりした女性であることが解ってくる。
彼女の生まれは九州だそうだが、父が地方長官をしていた関係で、女学校を東北のA市で卒業した。
父の没後は、母と一緒に東京の郊外に棲み、女子**に通学していた。
卒業後は独自の生活を立てながら、医学の研究を続けてゆく決心でいたが、美しい彼女のもとへは女学校時代から、結婚の申し込みが殺到していた。
それに、財務官をしている叔父夫妻までが、彼女のお嫁入りの世話に躍起となっていた。
――だが本人はというのに、ようやく時代にめざめつつある彼女が、先ず周囲を見廻す時に、真面目に問題とするような男は一人もいなかった。
階級闘争の激烈な時代に生きながら、この有産階級の男達は、脚下に迫っている明日の没落の運命を少しも知らない。
或ものは刹那の歓楽を追い、或ものは醜い利己の欲望に駆けめぐっている。
そういう男達の無智に対して、彼女はひそかに絶望していた。
丁度そうした時、彼女の眼の前に、実に長い間待っていた人のように現れて来た人があった。
それこそ、これから展開してゆく手紙の主人公――左翼の闘士Eである。
星新一生平介绍
星新一(1926-1997),日本东京人,本名星亲一,日本科幻界奇才,以创作精巧别致、富于哲思的“微型小说”闻名于世。
星新一的作品庞杂,除了科幻小说之外,还写了大量推理小说、幽默小说、散文及随笔。
他的作品曾在八十年代大量翻译引进台湾,带动“极短篇”
小说的创作风气。
在科幻方面,代表作品有短篇小说《有撒旦的天国》、《最后的地球人》、《未来伊索寓言》、长篇小说《声之网》、《梦魔的标靶》等。
1926年9月生于日本东京一个科学世家。
祖父小金井良精是人类学者,祖母是文豪森鸥外的妹妹喜美子,父亲是制药公司经理,曾赴美留学,还创办了药科大学,并担任过参议院议员。
1956年为逃避生意上的失败,加入了飞碟研究会。
1957年,星新一和柴野拓美一起创办了日本最早的科幻小说同人志《宇宙尘》,为日本科幻文学做出了卓越的贡献。
同年,他发表处女作,受到请多文坛前辈的青睐,作品被转载到当时由江户川乱步主编的推理小说杂志《宝石》,很快地跃登文坛。
1960年荣获直木赏的殊荣(曾有四次入围直木赏候补的记录)
1974年,日本新潮社出版了《星新一作品全集》,达十八卷之多。
1976年他荣获日本推理小说家协会大奖。
1981年日本讲谈社创办了文学季刊《微型小说园地》,并在该刊设立“星新一微型小说文学奖”,每年举办一次。
至1983年10月止,星新一发表的作品已逾一千篇,堪称世界纪录创造者。
1993年,在他完成第1001则极短篇作品后,宣布停笔。
之后他的病情迅速恶化。
1997年以间质性肺炎病逝。
星新一作品特点及其创作方法论分析2.韩国新罗大学,韩国釜山广域市, 6177363.吉林省吉林市龙潭区江北实验学校,吉林吉林 132021)摘要:星新一是一位著名的日本科幻小说家、推理小说家,其代表作品为《ボッコちゃん(译为“人造美人”或“波格小姐”)》。
星新一的作品通常包含了幽默、讽刺、奇幻、科幻等元素,构建了一个与现实不同的世界,让读者感到惊奇和新鲜,是不可多得的文学佳作。
本文旨在通过分析星新一在中国的发展情况,探讨其融合“硬科幻”与“软科幻”的作品特点,阐述和分析星新一的科幻微型小说创作方法论。
关键词:星新一、科幻微型小说、幻想、创作方法论星新一(1941年12月6日-1999年9月27日)是一位著名的日本科幻小说家、推理小说家,被誉为“ショートショーの神様(日本微型小说鼻祖)”。
他的代表作包括《ボッコちゃん(译为“人造美人”或“波格小姐”)》、《おーいでてこーい(喂——出来!)》、《花と秘密》,《お土産》等,这些作品不仅在日本国内广受欢迎,而且被翻译成了“二十多种语言”出版,并在海外享有盛誉。
尽管他的作品通常只有几页甚至只有一页或两页,但是每个故事都能给读者留下深刻的印象。
本文旨在通过对星新一的作品特点的分析和探讨,深入了解其作品的独特魅力。
一、星新一科幻微型小说在中国的发展中国最早对科幻小说产生兴趣的学者是梁启超,他提出的“哲学科学小说”理论使法国的科幻小说被翻译成中文。
鲁迅也翻译了儒勒·凡尔纳(Jules Gabriel Verne)的《月界旅行》和《地底旅行》等科幻小说。
自1976年起,中国的科幻小说开始复兴,科幻作家叶永烈将“科学”、“小说”和“幻想”视为科幻小说的三要素。
星新一的作品也在这一时期引入中国,并被归类为短篇小说类型。
2000年以后,星新一的小说在中国教育界备受欢迎,部分作品作为科幻小说的典范收录在了义务教育阶段的“语文”教材中。
例如,人民教育出版社出版的义务教育课程标准实验教科书语文・八年级下册中引用了《おーいでてこーい(喂——出来!)》,复旦大学出版社出版的“幼儿师范语文课本·语文教程”中引用了《雪の夜(雪夜)》等。
角川文庫ちぐはぐな部品[#地から2字上げ]星新一目次いじわるな星万能スパイ用品陰謀歓迎ぜめ接着剤なぞの贈り物飲みますか廃屋宝島名判決魔神凍った時間みやげの品シャーロック・ホームズの内幕夜の音変な侵入者恋がいっぱい足あとのなぞ抑制心みごとな効果神最高の悪事ネチラタ事件ヘビとロケット鬼取立て救世主出入りする客災害壁の穴あとがきいじわるな星宇宙パトロール隊によって、たまたま発見されたジフ惑星についてのニュースは、地球の人びとの関心をよびおこした。
通りがかりに観察しただけだが、そう大きな惑星ではないといえ、海があり川があり、山があり谷があり、森や野原もあるようだとの報告だった。
住民はいないらしいという。
なお、ジフ惑星という名は、その星の固有の名ではなく、発見者であるパトロール隊員の名にちなんで、かくのごとくつけられたのだ。
そんなことはともかく、地球ではみな大喜びだった。
人口過剰ぎみの地球にとって、このうえない植民地であり、別荘地である。
また、その位置からみて、宇宙へさらに発展するための絶好の中継地ともいえる。
価値のある資源にも、富んでいるにちがいない。
かくして、第一次基地建設隊が編成され、彼らの乗った宇宙船が出発していった。
ジフ惑星の地理を調べ、簡単な空港を作り、通信塔をたてることなどが任務だった。
これからは、多くの人がジフ惑星を訪れることになるはずだ。
それに必要な体制を、まず整えなければならないのだ。
まじめで優秀な隊員たちと資材とをつんだ宇宙船は、虚空の旅をつづけ、やがてジフ惑星へと着陸した。
隊員たちは、景色を眺めて歓声をあげた。
「なんという、すばらしい星なのだろう。
あたりには美しい花が咲き、そのむこうには、静かな緑の森がある」「さらに遠くには、青い山々が見える。
なによりも気持ちがいいのは、ほかに人影がみあたらないことだ。
大ぜいの人でごみごみした地球にくらべると、まったく、天国としか言いようがない」みなは口々に、うれしさを話しあった。
だが、隊長はさすがに使命を忘れず、命令を下した。
「さあ、さっそく仕事にかかろう。
宇宙船につんできた資材を、運び出せ」「はい……」隊員たちは従いかけたが、その場で足をとめ、鼻での呼吸をくりかえした。
どこからともなく、いいにおいがただよってきたのだ。
それは料理のにおいだった。
「おれの気のせいかな。
うまそうな、においがするが……」「おれの鼻にも、におう。
すぐ近くからのようだ」みなは仕事にかかるのをやめ、周囲をさがした。
においのもとは、すぐみつかった。
一枚の白い布が、野原にひろげられてある。
その上に、いくつもの大きな銀の皿が並んでいた。
もちろん、皿だけではない。
肉や魚や新鮮な野菜などを使った、豪華な料理が、それに盛られているのだ。
地球の一流レストランでも、めったにお目にかかれないような高級な料理であり、しかも量が多かった。
皿のまわりには、グラスにつがれた酒もあった。
これらの料理や酒から、かおりがたちのぼり、みんなの鼻を刺激したのだ。
しかし、この無人のはずの惑星に、このようなものが存在するとは、どうにも信じられない現象だった。
思わず近よりかける隊員たちに、隊長は大声で言った。
「みな、注意しろ。
これはただごとではない。
警戒心をゆるめるな」強い命令だったが、隊員たちにとっては従いにくいことだった。
地球を出発して以来、単調きわまる宇宙食ばかりを、あてがわれてきている。
宇宙食にはあきあきしていた。
もっとも、普通の場合なら、使命感と自制心とによって、それに耐えることはできる。
しかし、こう実物を目の前に出されては、誘惑に抵抗しがたい。
さらに、まわりの美しい景色も、食欲をかきたてる。
ついに一人の隊員はがまんしきれなくなり、ふらふらと近づき、手を伸ばした。
そのとたん、料理の皿も、酒も、すべてが消えてしまった。
あとには草があるばかり。
においも残っていない。
みなは顔をみあわせた。
「幻影だったようだ。
宇宙の旅に疲れた、われわれの心がうみだした幻だったのだろう」「しかし、それにしても、うまそうな料理だったな。
おれの目と鼻とには、印象が強く焼きついてしまった。
口にはまだ唾液がたまっているし、胃は音をたてている」隊長は、また命令を下した。
「さあ、幻覚のことは忘れて、仕事にかかろう。
われわれには、任務がある」しかし、みながなにかをはじめようとすると、その料理の幻が現れるのだった。
各人が分散して、仕事をはじめようとすると、それぞれの隊員のそばに現れる。
そして、いかにもうまそうな形とにおいとで、誘惑するのだ。
幻影とはわかっていても、つい手を伸ばしてしまう。
だが、その瞬間に消えてしまい、苦笑いしてわれにかえると、また現れるのだ。
それだけのことで、直接の危険があるわけではないのだが、まるで仕事にならなかった。
日数がたっても、なれるどころか、いらいらした感情は、ますますひどくなる。
不眠症になる者もあった。
宇宙食がのどを通らなくなり、栄養不良になる者もあった。
幻の料理を追って、さまよいつづける者もあった。
建設の計画は尐しも進まない。
ついに隊長は、いちおう地球へ戻ることにした。
ノイローゼ状態の隊員たちを乗せ、宇宙船は地球に帰還した。
第一次の隊は、かくのごとく失敗に終った。
だが、基地建設の計画を、あきらめるわけにはいかない。
といって、べつな隊員を送りこんでも、同様な結果になることだろう。
会議が重ねられ、作戦がねられ、第二次宇宙船が出発していった。
これには腕のいい料理人が乗組み、最高級の料理材料や酒がつみこまれた。
そのために宇宙船はより大型となったが、やむをえないことだった。
なにしろ、ほかに方法がないのだ。
隊員たちの心を料理の幻から守り、平静に保つには、それに匹敵する現実の品を作って与えなければならない。
このような準備のもとに、第二次の宇宙船はジフ惑星に着陸した。
まず、着陸祝いもかねて、料理人は腕をふるった。
いい酒もつがれ、みな充分に満足した。
これならもう、幻が現れても、気を散らされることはない。
しかし、その時、どこからか美しい歌声がしてきた。
心をとかすようなメロディーだった。
みながそちらに目をやると、若く美しい女性の姿があった。
均整のとれた魅惑的なからだで、それがはっきりとわかるような薄い布の着物をまとっている。
目は情熱的で、口もとには微笑があり、歌を口ずさんでいるのだった。
隊員の一人は、隊長がとめるのもきかず、かけだしていって抱きついた。
いや、本人は抱きついたつもりだったのだが、とたんに、その姿は消えうせた。
これをきっかけとし、美女の幻はいたるところに出現しはじめた。
手でふれようとすると、たちまち消え、あきらめるとまた出現する。
手におえない幻だった。
資材を運ぼうとすると現れ、組みたてようとすると現れる。
気を散らさないためには、目をつぶらねばならず、目をつぶっては仕事にならない。
また、目をつぶっても、耳には歌声がはいってくるし、耳に|栓《せん》をしても、心をそそる体臭がする。
建設作業は尐しも進展せず、またノイローゼ患者が続出した。
第一次よりもっとひどかった。
隊長は彼らを宇宙船に収容し、地球へとひきかえした。
第三次の宇宙船は、さらに大型なものとなった。
料理人と材料のほか、よりすぐった美女たちが同行したのだ。
大変なむだにはちがいないが、それくらいの犠牲を払っても、ジフ惑星には基地を建設する価値がある。
かくして、万全の準備と自信を持って乗りこんだのだが、着陸と同時に、またも予期しなかった事件が発生した。
あらたな幻が現れたのだ。
宝石の幻、ミンクのコートの幻、美しい服の幻、上等な化粧品の幻などが出現した。
男の隊員たちは平気だったが、女性たちとなると、そうはいかない。
彼女たちは不平を言い、不満を叫び、泣き声をあげた。
例によって、幻は手にとろうとすると消え、あきらめると現れる。
彼女たちにはさんざん悩まされた。
地球へ帰りたいとだだをこね、ヒステリー状態におちいった。
男の隊員たちは、それをおさえ、なだめることに専念しなければならず、仕事どころではなかった。
第三次の宇宙船も、なんらの成果をあげることなく、むなしく地球に戻らねばならなかった。
第何次かの宇宙船は、ものすごく巨大なものとなった。
料理や美女はもちろん、あらゆるぜいたく品、遊び道具、なにからなにまで、最高級のものがつみこまれたのだった。
スポーツカーもあり、モーターボートもあり映画のフィルムも大量にそろえ、ゴルフ用具からルーレットまで含まれていた。
これなら、いかなる幻にも対抗できるはずだった。
そして、大きな自信のもとに、ジフ惑星へと着陸した。
もはや、なんの幻も出現しなかった。
すべての幻が消えていた。
料理の幻も、美女の幻も、宝石の幻もなくなっていた。
しかし、それとともに、もっと大きな幻も消えていたのだった。
海も川も山も、また森も野原も消えていた。
わずかの水も流れていず、花ひとつ咲いていなかった。
ただ、灰色っぽい岩ばかりが、単調にひろがっている。
だれかがその岩を分析してみたが、有用な鉱物はなにひとつ含まれていなかった。
万能スパイ用品秘密情報部員のエヌ氏は、上司の呼出しを受けて出頭した。
「こんどの任務は、なんでしょうか」「重要な仕事だ。
対立国に侵入し、ミサイル関係の秘密を調べてきてもらいたいのだ」「相棒はだれでしょうか」「きみひとりだ。
しかし、これを持っていけば、数人前の働きができる」上司の出した品を見て、エヌ氏は言った。
「カメラですね」「ただのカメラではない。
わが秘密研究所で開発した、すばらしいものなのだ」「ダイヤルのようなものが、ついていますね」「そうだ。
その合わせ方をよく覚えておいてもらわねばならぬ。
まず、ここに合わせるとラジオが聞ける。
つぎの目盛に合わせると、無電器となって、ここの本部と通信ができる。
そのとなりのに合わせると、聴音器となる」「聴音器とはなんですか」「小さな音を拡大するしかけだ。
こうして壁につけると、となりの部屋の会話が聞ける。
また、眠る時に枕もとに置いておけば、忍び寄る足音も大きくなるから、すぐに目がさめ、不意うちされなくてもすむというわけだ」「だけど、大ぜいに襲われたら、どうしましょう」「その時は、ここにダイヤルを合わせると、薬の粒が出てくる。
それを口に入れて、ここに目盛を合わせる。
すると、強い眠りガスが発生し、たちまち相手は倒れてしまう。
しかし、薬を飲んでおけばガスの作用を受けず、眠くならないですみ、脱出できる」「テレビは見えないのですか」とエヌ氏は思いついて聞いたが、上司はまじめな顔で首を振った。
「おいおい、遊びに出かけるための道具ではないのだぞ」「そうでしたね」エヌ氏は頭をかき、上司はダイヤルの説明をつづけた。